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日経ビジネスに見る「経済先読み・解読」 076号
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「日経ビジネス2011年1月31日号 no.1576
『テレビ明日なき戦い~サムスン、赤字転落の真相』」より
家電の王様であるテレビをめぐり、電機メーカー各社は、様々な戦略を考え、採用し、浮き沈みを繰り返しています。
シャープは、テレビの薄型化が進んだこの10年間に大胆な投資戦略がズバリ的中し、パネルから液晶テレビを一貫生産する「垂直統合モデル」で急成長を遂げました。
一方、ソニーは平面ブラウン管で世界シェアナンバー1の地位を築いたものの、その成功体験に引きずられ、薄型の波に乗り遅れました。巻き返しを図ろうと取った戦略は、パネルを外部から調達する「水平分業モデル」です。
しかし、ここにきて風向きが変わりました。韓国、台湾、中国にパネル工場が乱立し、パネルが供給過剰となっているのです。パネル自体の価格は下がり、供給も安定したため、内製化する意味がなくなりました。
今後、テレビの需要が減少することを考えると、大きな痛手を被る可能性のあるのは、ソニーよりもむしろシャープなのです。
昨年まで正しいとされていた戦略が、今年は崖っぷちに追い込まれるほど、今テレビ業界は浮き沈みが激しく、なんだか訳がわからなくなっています。
業界の王者「サムスン」のデジタルメディア事業部は、2010年7月~9月期に約170億円の赤字に転落しました。今の事業規模とウォン安を考えれば、赤字は不自然にも見受けられます。そのサムスンが赤字に落ち込むというのは、世界的にテレビ価格が猛烈な勢いで下がっていることを意味します。
今週は、勝者不在のこの戦いにおける戦略の取り方について特集されています。
今年の7月24日、半世紀余りにわたってテレビ局各社がながし続けて行きた地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送へ全面移行します。
恥ずかしながら、まだ地デジ対応のテレビに買い替えていない我が家のテレビは、文字通り「ただの箱」となってしまいます。2002年製のソニーのテレビは、まだ十分に使えるのですが、7月24日を境に、何も映らなくなってしまうのです。
テレビをほとんど見ない私にとっては、これを機会にいっそのこと「テレビは無し」という家庭にしたかったのですが、家族から猛反対にあっています。いずれ買わなければならない時が来てしまうようです。
日本全国にある我が家のような地デジに対応できていない家庭が、地上波のテレビを見ることができなくなるとあって、ここ数年、地デジ対応の薄型テレビの販売はうなぎ登りに伸びてきました。
この地デジバブルに加え、家電エコポイント制度による特需も、上ブレの大きな要因となっています。
日本の世帯数が約4300万世帯です。2009年に国内で出荷された薄型テレビは1590万台、2010年度は、2300万台に到達すると予想されています。
パイは限られてきました。
2011年度は、エコポイントによる「官製特需」が消滅し、我が家のような最後まで我慢し続けた家庭が購入を済ませると、買い替え需要は終焉します。
その結果、2011年度の市場規模は1050万台にまでしぼみ、さらに2012年度は、740万台にまで落ち込むと予想されています。
これは、どう考えてもヤバいです。
日本の代表的なテレビメーカーの国内販売依存度は、三菱電機93%、日立製作所60%、シャープ57%、東芝39%、パナソニック25%、ソニー13%となっています。
国内依存度の高い三菱電機、日立制作所、シャープは無傷でいられるはずはありません。
こんな状態であっても、電機メーカーはテレビを作り、販売することをやめません。なぜなら、テレビは電機メーカーの顔だからです。
消費者は毎日、リビングルームなどでテレビを目にします。それゆえにテレビは消費者とメーカーの重要な接点であり、撤退してしまえば顧客とのつながりが損なわれてしまうという考え方を持っています。
「日立コンシューマエレクトロニクス」の社長さんは、「ブランドイメージを保つためにも、テレビを作り続ける必要がある」と言っています。
「三菱電機」の事業部長さんも、「テレビを扱っていれば、エアコンなどほかの商品の拡販にもつながる」と期待しています。
どんなに赤字でも、テレビ事業は切れないのが電機メーカーの実情です。各社とも限界ギリギリまで踏ん張る覚悟なのです。
まさに、明日なき戦い。
何かしらの答えがでるのは、そう遠くない未来なのではないでしょうか。
本来、経営者は事業の進め方を前向きにとらえ、いかにして拡大していくかを考えるのが仕事です。経済が拡大基調である時、会社自体が若く、今後も需要が拡大すると見込まれる時であれば、当然のことです。
一般的に、撤退を意識した戦略はあまりにも消極的で好まれません。思い浮かべることすら嫌だという社長さんもいらっしゃるでしょう。
また、我々中小・小規模企業は、コアとなる事業をそう沢山は持ち合わせていません。ひとつの事業から撤退するということは、会社そのものをやめることを意味します。
しかし、だからといって、市場のなすがままに身を任せ、引くに引けないところまでいってから倒れることが良しとされるのでしょうか。
「撤退」という選択肢をあらかじめ用意しておき、負けそうな仕事には早々に見切りをつけるのもひとつの手です。垂れ流す赤字分を使って新しい事業を行う方が前向きであるとも考えられます。
「事業をいかに安楽死させ、次に目を向けること」を選択肢のひとつに入れてもいいのではないでしょうか。
「逃げるが勝ち」って悪くない言葉です。
危機の時は、安易に見ているともっと悪くなる ~ 福井威夫
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