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日経ビジネスに見る「経済先読み・解読」 080号
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「日経ビジネス2011年2月28日号 no.1580
『“若者は消費しない”の嘘~従来型商品戦略の否定がヒットを生む』」より
いつの時代も世代間のギャップというものは存在します。歳を取りとっくにオヤジになってきている私の世代も、以前は年配の方々からなかなか理解してもらえませんでした。
今は、我々の世代が今の若者を理解できずに苦しんでいます。
今の若者の消費動向をみると、これから日本の経済はどうなってしまうのかと心配になるくらい消費をしません。「若者は消費をしない」という定説は、ある意味で正しいと思います。
私が若いころ、ある先輩が言った何気ない一言をよく覚えています。
「借金してでも遊びなさい」
あの頃は、収入に対して不相応に出費しても、いつかは取り返せると信じられたのです。なぜなら、今年より来年、来年より再来年は間違いなく収入が増え、生活のレベルも上がっていくと誰もが信じていたのです。
今の若者に、このような話をしても理解してもらえません。先が見通せないため借金もしません。むしろ笑われます。そういった行動は恥ずかしいと思うのです。
ムダが美徳であった頃、「大衆の浪費を刺激する10の戦略」に則って企業は戦略を打ち出していました。
その戦略とは、
①捨てさせる(100円ライターや1000円の時計)
②無駄使いさせる(ちょっと押しただけでドバっと出るエアゾール容器)
③贈り物にさせる(バレンタインや父の日セール)
④蓄えさせる(書物の全集)
⑤抱き合わせる(カメラの純正のケース)
⑥きっかけを与える(読書習慣や虫歯予防デー)
⑦単能化させる(年齢別の専用ビタミン剤)
⑧セカンドとして持たせる(セカンドハウスやセカンドカー)
⑨予備を持たせる(タイヤ・電球のスペア、フィルムなどのストック)
⑩旧式にさせる(まだ使えても旧式だと思わせる)
というものです。
なるほど、以前は見事なまでにはまっていました。今、このやり方をすると若い世代には見向きもされないどころか反感を買いかねません。
今週は、成熟時代に生きる今の若者世代にあった商品展開や販促方法を展開し、若者世代の支持をいている企業の特集です。
カイロといってどのような形態を思い浮かべるでしょうか。一番に思い浮かぶのは、オレンジ色の袋に入り、鉄粉の酸化作用によって発熱するカイロです。
今、若者に支持されているのは、この使い捨てではなく、充電することで繰り返し使えるカイロです。目黒にある「エレス」という会社から発売されている「イーカイロ」は、パソコンのUSBポートなどから充電することで繰り返しあたたかくなり、形状もipodのようなデジタルオーディオプレーヤーのよう形をしています。
使い捨てカイロの価格はかなり下がり、いまや1個20円程度にまで下がっています。これを1時間当たりで換算するとやく1.7円。一方、「イーカイロ」の価格は1個2100円。500回程度使うと寿命が来ます。電気代を含めて1時間当たりのコストは1.7円以下で収まります。
店頭では、「使い捨てカイロより1回あたり0.3円安い」と書かれたPOPにより、若者から人気を集めているとのことです。ひとつあたりの単価は高くとも、賢い消費をアピールすれば若者はついてきてくれます
今の若者は高級ブランドに全く興味がないではありません。
所有にこだわる団塊やバブルの世代に対して、今の若者は所有することにデメリットを見出します。数十万円もする高級バッグはメンテナンスや保管場所に気を使わなくてはならず、ひとたび購入すれば新作が出ても簡単には買い替えられません。
そのデメリットを解消するのがレンタルです。高級ブランド品レンタルサービスの「Cariru(カリル)では、最新のバッグやアクセサリーを5日から最大90日間レンタルが可能です。市場価格が十万円の高級バッグを5,6000円で5日間レンタルができるのです。2年足らずで6000人もの会員を集めています。
「結婚式や特別なセレモニーの日にはブランド品を身につけたい。でもめったにない機会に対して十万円単位の出費はしたくない」
そんな若い消費者の心をつかんでいるのです。
トヨタから最近発売されたクルマ「ラクティス」のCMには、従来のような外国の美しい風景の中を走り抜けるシーンや、家族団らんで海や山にドライブに行くシーンは出てきません。ホームページ上でも、クルマの広告に欠かせないと思われる燃費やサイズなど具体的な性能に対する訴求は控えめです。
クルマに関心の低い若者には、そのような情報を提供しても関心を持ってもらいないのです。
ある調査によると、両親が20代の家族が休日に出かける場所の第1位は、「近郊のショッピングセンター」であり、2位は「大きな公園」、3位は「実家や親せき宅」だそうです。
このような世代には非日常を訴えるのではなく、日常に商品やサービスを置き、快適性や利便性を訴えた方が響くのです。
「イケアに行って購入した家具をその日のうちに持ち帰り、組み立てられますよ」と伝えるべきなのです。
「ロッテ」が発売した「フィッツ」というシリーズが売れています。
このガムの特徴はふたつ。ひとつはガム自体が柔らかくて噛みごたえが従来のガムに比べて少ないことと、もう ひとつはガムの端をつまんで引き抜くと包装がワンタッチではがれることです。
若者のガムが好きじゃない理由のトップは、「噛むのが面倒くさい。疲れる」という理由だそうです。食生活の変化により、若い世代はアゴが弱くなっていてガムを噛むと疲れるのだそうです。
面倒くさがり屋の若者は、ガムを食べる前に包装を無垢のすら嫌がるかもしれないと、簡単にはがれる包装にしています。
加えて、噛み終えた後に捨てるのが面倒くさいということを排除するために、通常のガムより長続きするガムを発売しています。
面倒くささを徹底的に排除しています。若者に受け入れてもらうには、妥協のない商品設計が必要なのです。
「団塊やバブル世代が若い時期にカネを使っていたのは、企業の販売・宣伝戦略に踊らされていただけだ」と若者たちは言います。
過剰な消費を敬遠し、必要と思うものにしか出費しない若者は、とても手ごわい存在です。
そうかといって、手をこまねいていては何もはじまりません。今までと同じやりかたで笛を吹いたところで何の変化も起こらないのです。
知恵を絞って、この手ごわい世代を踊らせようではありませんか。
商品へのこだわり、ポジティブ思考、提案営業では売れない。お客さんの感情を身につけるマーケティングを ~ 神田昌典
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