●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
日経ビジネスに見る「経済先読み・解読」 061号
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
「日経ビジネス2010年10月11日号 no.1561
『イマドキの必勝・集客術~小さい・軽い・面白いで消費者の心をつかむ』」より
「どこに店を構えるか」は、重要な問題です。家賃は高くとも、人通りの多い通りに店を構えれば、人目につきますし、売上も見込むことができます。ところが、その立地のよさが収益に結び付かなくなってきています。百貨店がいい例です。どの百貨店も一等地にありながら、必要とする売上を確保できていません。
渋谷のセンター街にあった大型のCDショップ「HMV」。ここも閉店に追い込まれました。かつて流行の発信基地として、多くの人で賑わっていました。私も若かりし頃、デートの待ち合わせは渋谷の「HMV」でした。どちらかが遅れても時間をつぶすにはもってこいの場所でしたし、遅れたお詫びに聞きたい曲をプレゼントすることもできました。その当時は、好きな音楽を聴くにはCDを買うしかありませんでした。携帯電話も着うたもipodも無かったからです。
時代は変わり、その変化に合わせていくことができなければ、一等地が一等地でなくなってしまうのです。
逆を考えれば、一等地に無くても、十分勝負をすることができるということです。新たな発想や運営方法は好立地を超えることができるのです。
今週は、自らの創意工夫で立地を飛び越える集客方法を実践しているお店のご紹介です。
「青山フラワーマーケット」を運営する「パークコーポレーション」の出店戦略はとても特徴的です。人通りの多いところにゲリラ的に店を出し、お花を販売しています。駅ビルの入り口で、かつてはホールだった場所や、もともとショーウインドウだったところなどをお店にしています。間口は20mあるものの、奥行きは1.5mしかありません。
見た目であるとか、影に隠れているといったことは基準になりません。とにかく人通りがおおいところであれば、出店候補地となります。5坪でいいそうです。
省スペースを実現するため、生花を保管する冷蔵庫は置いていません。在庫は持たず、仕入れてから3日間で売り切る体制をとっています。
一般的な生花販売の単価は、3000円程度、一方でこの「青山フラワーマーケット」は、半分の1500円程度です。 贈答目的ではなく、「部屋やオフィスにちょっと飾る」といった目的での購買を狙っています。
品揃えは手軽に持ち帰れるように300円~500円の小さなブーケが中心です。
つまり、人通りが多い、省スペース、低い単価、と、すべてが高回転をするための戦法です。
普通の人が見たら一等地には見えない場所を、その戦法によって一等地に変えているのです。
フィットネスクラブは、大都市の駅前や人口集中している住宅地近隣の駅近くへの出店が一般的です。
プールやトレーニングマシン、スタジオなどを必要とし、インストラクターの手配や、その他もろもろの運営費を合計すると、年間5億円は必要となります。ビジネスとして成り立たせるには、会員を5000人ほど集めないと採算は合いません。
そんなフィットネスクラブを、人口10万人~20万人ほどの中小都市ばかりを狙って出店し、経常利益率を20%弱確保している驚異的な会社があります。
「ホリデイスポーツクラブ」は、会員2500名で採算ラインに乗る低コストモデルのフィットネスクラブを展開しています。月会費は、7000円で、年間の売上高は2億1000万円。経費を1億3650万円に抑えることで、35%の利益率を目指しています。
あえて一等地を狙わないことで、駐車場を含めた6000㎡程の土地を安い借地料で確保することができます。
通常最上階にあるプールを地上階に設置することで、建設費を抑えています。
インストラクターは、外部から招へいするのではなく、社員にやらせます。プログラムも社員が教えられるように独自で開発します。新入社員でも3カ月の研修を終えればインストラクターとしてデビューします。フィットネス初心者が多い「ホリデイスポーツクラブ」では、プロの技は必要ないと割り切っています。
業界では、「地方ではフィットネスクラブは成り立たない」と言われています。この会社の社長さんは、「それは、都市型のフィットネスクラブが成り立たないのであって、やり方次第でいかようにもなる」と言っています。
業績不振で閉店したレンタルビデオ店やドラッグストアの跡地ばかりを狙って出店している古着屋さんがあります。
「ドンドンダウン オン ウェンズデイ」という名のお店には、毎週水曜日の午前10時に開店を待つお客さんが大勢集まります。
このお店の運営方法はとても変わっています。
お客さんから買い取った古着は、1000円から最高1万円まで、1000円刻みで値段が付けられます。
商品に値札は付けません。付いているのは、「もも」だの「スイカ」といったイラストが書かれた札です。
店内には、「今週の値段表」として、
『もも10,000円 大根9,000円 いちご8,000円 ブドウ7,000円
まめ6,000円 かぼちゃ5,000円 バナナ4,000円 きのこ3,000円
すいか2,000円 なす1,000円 ねぎ500円 ニンジン100円』
といった表が掲げてあります。
店舗の名前のとおり、毎週水曜日には全商品が一斉に値下げされます。つまり、昨日まで10,000円だったももは、9,000円に、5,000円だったかぼちゃは4,000円になるのです。待てば待つほど、値段は下がります。かといって待ちすぎるとお目当ての商品は他のお客さんに買われてしまいます。
たった1日で値段が1割から5割も値段が下がり、買うタイミングをゲーム感覚で計ることでお客様を楽しませ、人気を博しています。
店員さんの掛け声がイカしています。
「待つか決めるか取られるか、レッツエンジョイ、ドンドンダウン!」
掲げられている表を変えるだけなので、商品のタグを変える必要はありません。お客さんにもわかりやすいシステムです。
買取方法も変わっていて、お客さんが持ち込んだ商品はすべて買い取ります。ブランド品などの高額品を除き、その買取価格の決定方法は重量です。1kg最低500円。タンスの肥やしとなっていた洋服を21kg持ち込んだお客さんは1296円になったといって喜びました。
なんでも買い取ると宣言することで、商品の仕入れだけでなく、集客にも効果を発揮しています。
いかがでしょうか。
一等地の定義が変わってきています。
高い賃料を払わなくても、知恵と工夫でいくらでも勝負できるのです。
余談ですが、以前、私も中古品を買い取ってくれる店に行ったことがあります。いらない洋服やカバンなどを持ち込んだのですが、最初の店では、「値段がつきません」ということで、持ち込んだ2割くらいが戻ってきてしまいました。その中には、「カビの生えたルイヴィトン」のビジネスバッグがありました。
このまま家に持ち帰っても仕方がないと思い、家から少々離れた別のお店に持ち込んだところ、最初の店では突き返されたものにすべて値がつき、買い取ってくれました。しかも、「カビの生えたルイヴィトン」は、なんと1万円になったのです。
次の機会に私が持ち込むのはどちらのお店になるでしょうか。なにか掘り出し物を見つけようと訪れるのはどちらでしょうか。
家からの距離ではありません。勝負はすでについています。
今週の名言:新しい時代に適合するだけでは遅い。常に波頭に立ち、波と同じ速度で泳いでいなければならない ~ 飯田亮
スポンサーサイト
テーマ : ☆経営のヒント☆ - ジャンル : ビジネス